プログラム3:共生社会環境醸成のためのワークショップ

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きこえる社員ときこえない社員が共同して働きやすい職場環境構築に資するワークショップを開催し、協働環境向上マニュアルやコンテンツを開発する。

きこえない社員が多くのきこえる社員のいる職場で働くとき、コミュニケーションがうまくいかないことに起因する問題がクローズアップされてきます。きこえる社員が様々なコミュニケーションの方法を学ぶとともに、きこえない社員も配慮していただきたいことを積極的に伝えるなど、相互の働きかけが必要になります。この詳細と、コミュニケーションの改善事例やきこえない社員が希望を職場で伝える方法については、水野(2014a, b, c)が具体的な記述と提案をしています。

また、水野(2016)はきこえない社員が仕事上の悩みを職場で相談できる体制の構築とともに、職場外の関係機関との連携による相談体制の整備を提案しています。

きこえない社員ときこえる社員が協力しあってより働きやすい職場を作ることが大切ですが、きこえない社員がコミュニケーションの不自由さを感じずに相談できる場や研修に参加できる機会が限られていることにも課題があります。そうしますと、きこえない社員が職場で自らできることを積極的に学ぶことも共生社会への一歩になるのではないでしょうか。

そこで、このプロジェクトでは、きこえない当事者の視点で、きこえない社員が自らできることとして、職場改善を働きかけ、キャリア開発を実現するに必要な知識と技術を整理してきました。「就労に関わる諸制度」、「メンタルケア」、「暗黙知」、「業務上の情報の見える化」、「筆談に必要な力」、「アプリの選択と活用」と、6本のテーマについて、豊富な経験を持つきこえない当事者が講義を行います。

きこえる人もきこえない人も共に働きやすい職場環境の実現に向けて、企業・公的機関の人事・研修担当の皆さまに、本ページ最下部に掲載の研修マニュアル案を参考に、本サイトのコンテンツをご活用していただけますことを期待しています。

なお、本サイトのコンテンツは、きこえない生徒・学生の在籍する教育機関の進路担当の皆さまにも、キャリア教育の参考にご活用いただけるのではないかと思います。

「プログラム3」担当:大杉豊・小林洋子(2021年3月11日公開)
聴覚障害者の就労に関する文献(2021年1月24日作成:笠原圭子・小林洋子)
スライド 本プログラムの事業概要(スライド)

テーマ1:就労に関わる諸制度

聴こえない社員が能力を発揮し、会社に貢献できる環境の構築 ~聴こえない社員と企業を支える法制度と社会資源~

講師: 岩山誠(いわやままこと) 元公共職業安定所職員
生まれつきのろう者。筑波大学附属聾学校卒業。鹿児島大学大学院を経て厚生労働省東京労働局に入局。都内の公共職業安定所に11年間勤務し、主に障害者の就労支援に携わる。その経験を踏まえ、鹿児島大学大学院博士課程にて障害者の就労支援に関する研究を開始。その後、ダスキン愛の輪基金の助成を受けて英国セントラル・ランカシャー大学ろう・手話国際研究所に留学。帰国後厚労省を離れ、現在は都内の就労移行支援事業所の就労支援員として聴覚障害者の就労支援に取り組む。

参考:キャリアインタビュー記事(2016年)

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テーマ2:メンタルケア

職場におけるこころのケアについて

講師: 稲 淳子(いなじゅんこ) 精神保健福祉士 社会福祉士
兵庫県生まれ。 出生後熱病で聴覚を失い、ろうあ者。龍谷大学卒。クレジット会社、銀行で人事関係、社会保険関係の事務を経て、2000年より公益社団法人大阪聴力障害者協会の訪問介護事業ホームヘルパーとして従事。2002年、精神保健福祉士取得(ろうあ者としては初)。2008年、大阪労働局委嘱の精神障害者雇用トータルサポーターとして大阪府内のハローワークに従事。2011年、社会福祉士取得。2014年より独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「雇用管理サポーター」登録。現在、大阪府聴覚障害者情報提供センター「精神保健相談」、聴覚障害者関係機関の京都府いこいの村、大阪府なかまの里、兵庫県淡路聴覚センター、大阪府内の自立センターで「こころの相談」を受け持つ。他に、法定成年後見人として重複聴覚障害者支援に携わる。団体活動として、一般社団法人日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会の理事。東日本大震災被災地支援、全国聴覚障害者相談支援事業「聴覚サポートなかま」の活動に取り組む。

一般社団法人日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会 ウェブサイト

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テーマ3:暗黙知

きこえない人の職場における暗黙知獲得の課題

講師 : 宮本治之(みやもと はるゆき) 元 日本放送協会(NHK)職員
1958(昭和33)年、東京都生まれ。東京都立大学附属高等学校、早稲田大学卒業。1982(昭和57)年4月、日本放送協会(NHK)に歴史始まって以来、初の聴覚障害者として入局。横浜放送局営業部、放送センター放送技術局総務・人事グルーブ、放送文化研究所資料・情報システムを経て、2001(平成13)年、マルチメディア局チーフ・ディレクター(管理職任用)、放送文化研究所計画管理部副部長、渋谷本部の放送センター総務局業務管理部副部長を歴任。入局時は中度難聴も50歳台で完全に失聴。2018(平成30)年定年退職。現在は、学校法人慶應義塾に再就職し、慶應義塾大学病院に医療従事者として勤務中。

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テーマ4:業務上の情報の見える化

職場における業務上の情報の見える化について

講師: 永井紀世彦(ながいきよひこ) 社会福祉法人埼玉聴覚障害者福祉会
1971年、東京生まれ。先天性ろう。都立ろう学校幼稚部、地域の小学・中学・高校、日本大学、日本社会事業学校を経て、日本社会事業大学大学院修了(修士/社会福祉学)。1999年、社会福祉法人埼玉聴覚障害者福祉会に入職。ふれあいの里・どんぐり(ろう重複者施設)、ななふく苑(ろう者向け特別養護老人ホーム)、同施設長を経て、2011年、理事長に就任し、現在に至る。一般社団法人埼玉県聴覚障害協会理事。社会福祉士。

社会福祉法人埼玉聴覚障害者福祉会 ウェブサイト

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テーマ5:筆談に必要な力

書く力(日本語表現力)の重要性について

講師: 日下部隆則(くさかべたかのり)
同志社大学障がい学生支援室チーフコーディネーター、同志社大学全学共通教養教育センター講師。

山口県生まれ。非手話ユーザーの聴覚障がい者(2級)。1986年同志社大学法学部卒業後、富士ゼロックス(株)入社。以後2018年6月に富士ゼロックスサービスクリエイティブ(株)を退職するまで、主に契約法務、ナレッジマネジメント、人材育成領域の業務に従事。富士ゼロックス史上初とされる、聞こえる部下だけの組織における聞こえないマネジメント職への登用経験をもつ。また、同志社大学キャリアセンターで障がい学生キャリアアドバイザーを歴任。富士ゼロックス(株)勤務と並行して在籍した社会人大学院(同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程)で、当時(2000年)発足したばかりの障がい学生支援制度に出会った縁をきっかけに、2018年11月に現職に転職。

参考:職場での筆談交流会について(PEPNet-Japan:2015年)
「社会に出ることは怖いこと? ー聴覚にしょうがいのあるマネージャーの視点からー(立教大学講演会記録:2012年)

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テーマ6:アプリの選択と活用

職場でのICTツール活用

講師: 近藤真暉(こんどうまさき)  東芝デジタルソリューションズ(株)
生まれつきのろう者。筑波技術大学大学院修了後、東芝デジタルソリューションズ株式会社(旧:東芝ソリューション株式会社)に入社。入社以来、文字・画像認識や機械学習に関する研究開発に従事。業務で得た知見をもとに、聴覚障害者向け情報科学技術活用の啓発活動に取り組んでいる。2020年より日本社会事業大学非常勤講師兼任(情報科学)。

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マニュアル案

コンテンツを活用した研修について

本サイトのコンテンツを活用した研修の開催マニュアル案をいくつかの形式に分けて紹介します。

(1)個人研修

(2)内部講師によるワークショップ(テーマ1テーマ2テーマ3テーマ4テーマ5テーマ6

(3)外部講師によるワークショップ(テーマ1テーマ2テーマ3テーマ4テーマ5テーマ6

(4)他企業社員との交流ワークショップ(課題設定型情報・意見交換型

手話言語通訳を配置するにあたってのマニュアル

研修(ワークショップ)は参加者同士の言語およびコミュニケーション手段の違いによる制約を最小限に抑えるために、きこえない参加者が希望する情報保障(例:手話言語通訳、パソコン筆記、音声自動認識プログラムなど)の手配がなされることが望ましいでしょう。ただし、きこえない社員には手話言語を使わない方がいますし、手話言語を使用する社員でも、少人数のグループに分かれてディスカッションをするようなときは、ホワイトボード、付箋、筆談ボードなどを活用して、発言内容を文字や図表、イラストなどで要領よく伝え合うコミュニケーション方法をとることも考えられます。